記事詳細

寒中お見舞い申し上げます。 今年も葡萄作りから作業がはじまりました(;^_^2026年・理想園の挑戦!!ぶどうの「目覚め」を操る。シャインマスカットの収穫リレーに向けた、真冬の重要の作業が始まりました。

寒中お見舞い申し上げます。 今年も葡萄作りから作業がはじまりました(;^_^

2026年が明け、甲州市勝沼の澄み渡る冬空の下、私たち理想園の畑では、来たるべき夏に向けた準備が本格化しています。

今の時期、果樹園といえば静まり返っているイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、実際にはこの時期こそが、今年のぶどうの出来栄えや、収穫の流れを決定づける極めて重要な「設計図」を描くタイミングなのです。

現在、私たちはぶどうの剪定(せんてい)作業を進めています。不要な枝を落とし、新しい枝の伸びる方向を見定めるこの作業は、まさに未来への投資。そして、この剪定と並行して、一部の畑で行っている特別な工程があります。

それは、「ぶどうの休眠打破(きゅうみんだは)」を促す作業です。

今日は、美味しいぶどうをより長く、より多くのお客様にお届けするための、私たちの「戦略的な一手」について少し詳しくお話ししたいと思います。

■ぶどうを強制的に「起こす」理由

冬の間、ぶどうの木は深い眠り(休眠)についています。通常であれば、春の訪れとともに気温が上がり、自然と目を覚まして発芽するのを待ちます。しかし、私たちは一部の畑において、あえて人為的にこの「目覚め」を早めるアプローチを行っています。

その目的はズバリ、「発芽を促進させ、収穫のスタートを早めること」です。

理想園では現在、特に「デラウェア」と、大人気の「シャインマスカット」の畑の一部でこの処理を行っています。

なぜ、わざわざそんなことをするのか? それは、単に「早く食べたいから」という理由だけではありません。ここには、農業経営としての切実な狙いがあります。

近年、シャインマスカットの人気は留まることを知らず、当園でも栽培面積の多くを占める主力品種となっています。しかし、すべての畑のシャインマスカットが、自然のリズムに任せて一斉に芽吹き、一斉に花を咲かせ、一斉に収穫期を迎えてしまったらどうなるでしょうか?

収穫適期は非常に短いため、短期間に作業が集中しすぎてしまい、丁寧な収穫・出荷作業が追いつかなくなるリスクがあります。また、お客様にとっても「理想園に行きたいけれど、休みが取れる頃にはもうシーズンが終わっていた」という悲しい事態になりかねません。

そこで私たちは、一部の畑の目覚めを早めることで、「早い収穫の畑」と「遅い収穫(通常の収穫)の畑」というタイムラグを作り出しているのです。

これにより、ピークを分散させ、労働負荷を平準化すると同時に、お客様にはより長い期間、最高の状態のシャインマスカットを楽しんでいただけるようになります。これが、私たちが描く「収穫のリレー」戦略です(笑)

■青い液体の正体と、職人の手仕事

では、具体的にどのようにしてぶどうを目覚めさせるのでしょうか。 ここで登場するのが、写真にある青い液体です。

これは私が信頼する資材メーカーの薬品「メリット青」という資材です。本来は葉面散布肥料として使われるものですが、この時期に芽に直接塗布することで、休眠から覚醒させるスイッチを入れる効果が期待できます。

長年、営業担当者とは情報を共有して、時には県外から研究開発担当・技術担当者と果樹作りの栽培について貴重な話を聞かせて頂くなど指導を頂いております<(_ _)>

作業風景の写真をご覧いただくとわかる通り、私たちはこの液体を「刷毛(はけ)」を使って、一つひとつの芽に手作業で塗っていきます。

広大な畑に無数にある枝の、その一つひとつの小さな芽を狙って塗っていく作業。 「噴霧器で吹きかければ楽なのでは?」と思われるかもしれませんが、私たちは確実に効果を届けるため、そして無駄な飛散を防ぐために、あえてこのアナログな手法を選んでいます。

青い液体を含ませた刷毛を、眠っている芽に優しく、しかし確実に当てていく。 「今年もいい芽を出してくれよ」「一足早く起きてくれよ」と心の中で声をかけながら進める、根気のいる作業です。この地道な積み重ねが、夏のあの芳醇な甘さへと繋がっているのです。

■天候との戦い、3日間の晴れを狙え

この塗布作業において、最も神経を使うのが「タイミング」です。

ただ塗ればいいというわけではありません。この「メリット青」の中には展着剤(薬剤を定着させる成分)も含まれていますが、塗布した直後に雨が降ってしまうと、成分が流れてしまい効果が弱まってしまいます。

そのため、「作業後、少なくとも3日間は雨が降らない日」をピンポイントで狙わなければなりません。

冬の天気予報とにらめっこしながら、「よし、明日から3日間は晴れが続く!」と確信したタイミングで、一気にチームで畑に入ります。自然相手の仕事ゆえに、こちらの都合だけでは進められない難しさがここにあります。

■技術の選択肢と、理想園のこだわり

実は、発芽を促進させる方法はこれだけではありません。

例えば、「芽キズ処理」といって、芽の先に専用のハサミで傷をつけることで、養分の流れを変えて発芽を促す物理的な方法もあります。また、「CX-10」といった別の薬剤を使用する方法もあります。

それぞれの農園ごとに考え方や環境が異なるため、正解は一つではありません。 しかし、私たちは樹の状態や過去のデータ、そして作業の確実性を総合的に判断し、現在の「メリット青」を用いた塗布処理を選択しています。もちろん、常に新しい技術や知見にはアンテナを張り、その年その年の気候に合わせて最適な方法を模索し続けています。

■夏、笑顔でお会いするために

今、私たちが寒空の下で行っているこの地味な「青い液体の塗布作業」は、すべて夏の収穫シーズンにお客様の笑顔を見るための伏線です。

処理を行った畑のぶどうたちは、他の畑よりも一足早く春を感じ取り、芽を吹きます。 そして夏には、一番乗りのシャインマスカットとして、皆様の元へとお届けできるはずです。

「早く収穫できる畑」から「ゆっくり育つ畑」へ。 バトンを繋ぐように長く続く理想園のぶどうシーズンを、どうぞ楽しみにお待ちください。

寒さはまだしばらく続きますが、畑では着実に生命が動き出しています。 本年も、理想園をどうぞよろしくお願いいたします。

PAGE TOP ▲